【気仙沼条南商店街】子どもたちが希望が持てるような、絆やつながりを感じられる商店街にしたい

宮城県気仙沼市にある気仙沼条南商店街は、大ヒットした映画「THE FIRST SLAM DUNK」のポスターを「おじさんたちが忠実に再現した」ことで、一躍話題になりました。最高年齢89歳、平均年齢64歳の5人のおじさんたちの表情豊かなポスター、見れば確かに話題になるのも納得です。
しかし、気仙沼条南商店街にはポスターだけではない、素敵な魅力がたくさんあったのです。
その魅力に迫るべく、気仙沼条南商店街の三浦喜市会長(63)と赤間文彌名誉会長(89)にお話をお伺いしました。

<三浦会長>
私たち商店街の夢をお話しするには、まず商店街の名前が変わったという経緯をお伝えしたいんですけれども、いまの「気仙沼条南商店街」という名前は、実は2023年の5月に変わったものなんです。それまでは「気仙沼新中央商店会」という名前でした。

それがどうして名前を変えることになったかというと、実は2024年3月に、私たちの地域にある条南中学校が統廃合によってに廃校することになったんです。

それで、条南という名前を残すことで、地域に愛着を持ってもらえるようにしたいとか、子どもたちがまたここに戻ってきたくなるような温かい街にしようという思いから「気仙沼条南商店街」という名前になったんです。いままでは商店「会」でしたが、商店「街」にしたのも、そういう思いが込められているからでもあります。

あと、話題になったスタンプラリーのポスターなんですが、あのポスターのおかげで、お客様とお店、それからお店とお店のあいだで「このポスター面白いよね」とか「ポスターに出てる人だ!」とか、そういうコミュニケーションが深くなっているんですよ。単なるお買い物だけじゃなくて、地域の中でのつながりが強くなる、それがいちばん大事なんですよね。

それに、あのポスターもバズったって言われてますけど、11年前からやってますから。最初はNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』のパロディで、『あかまちゃん』っていうのをやりました。赤間さんに海女さんの格好をしてもらってね。だから、今年だけでやってるわけじゃないので、私たちの仲間内ではああいうポスターもそれほど驚くことではないんです。

本当に何もない商店街なので、私たちには人とアイデアしかないんですよ。だから我々には汗とアイデアの歴史があります。といってもまあ、そのアイデアも「役員会」という飲み会で生まれたりしてるので、仲間たちで楽しみながら話し合っている感じですけどね。

<赤間名誉会長>
昔はこういう商店街は気仙沼にはなかったんです。それがだんだんお店が増えてきて、1997年の9月25日に「気仙沼新中央商店会」ができました。私も本当は会長をやる予定ではなかったんですが、やむを得ず引き受けたらそこから25年もやる羽目になってしまいましてね(笑)。とは言っても、まあ皆さん本当に助けてくれました。

うちの商店会では最初「ナイトフェスタ」っていう夜祭りをやったんですよ。3年間、毎月第二土曜日の夜にね。そうやって華々しくやって旗揚げしたんですが、東日本大震災の頃にはだいぶ衰退しまして、空き店舗も20軒ぐらい出てきたんですよ。ですが、うちの会員みんな、大変な形になってもここでがんばり続けて、いまも136軒あって100軒を下回ってないんです。これは本当に素晴らしいことだし、大事なことだと思います。

<三浦会長>
そのあと今度はコロナで大変だったんですけど、いまの商店街のメンバーもみんな子どもの頃からここで育ってますし、それこそさっき赤間さんがおっしゃったナイトフェスタも20代30代の頃から毎月毎月やってきた絆もありますので、地元への愛着っていうのが根ざしてるんですよね。だからこそ、がんばっていられるんだと思います。

<三浦会長>
最近で言うと、能登半島で地震がありましたよね。それを受けて、商店街の近くにある九条小学校の六年生が、休み時間に「僕たちに何かできることないか」ということで、20人ぐらいで話をしたそうなんです。それで商店街に「募金箱を置いてもらえないだろうか」って、我々が作ったマップを広げてですね、子どもたちが自分たちで相談して「ここのお店にお願いしてみよう」とか考えて、自発的に商店街にやってきて募金活動をしたんです。

6年生というと12歳なので、彼らは震災を知らないんですね。でも、その子どもたちが人の痛みを分かる子どもになったというか、彼らが成長していく過程の中で、商店街のほうでもバックアップして連携できたのは素晴らしいと思うんです。

ですから、その子どもたちもまた大きくなって、条南商店街でこういう活動をしたよなという思い出になれば、気仙沼に戻ってくるかもしれませんし。そういった形で、地域とともにタッグを組んでこれからもやっていきたいですね。

<赤間名誉会長>
いま、条南中学校の跡地の利用ということも踏まえて、そこに魚の市を作れないかと考えているんですが、それと一緒に花畑を作りたいっていう夢もあるんです。山形県の川西町というところに「やまがた川西ダリヤ園」というのがありまして、大きくてすごく有名なんですけれども、そこまで大きなものは作れなくても、まずはダリヤの何本かを中学校の跡地に植えて、いずれ大きなことになればいいと思っています。

そこで、まずは花で有名になろうということで、田中前大通りの140箇所に花壇を置いてマリーゴールドの花を植えました。そしてそのマリーゴールドを夏の発芽のときにコンクールに出したら、優秀賞になったんです。

<三浦会長>
そのマリーゴールドは、赤間さんがぜんぶお世話してるんですよ。毎日毎日、140個の花壇ぜんぶにお水をあげてね。だから、そういう姿を私たちも真似させていただきながら、商店街みんなで仲良く、絆とか、子どもたちの笑顔とか、大切にしながらやっていきたいですね。

【編集後記】
気仙沼条南商店街は、HPやFacebook、Instagramで実際の雰囲気を見ることができます。個性的で魅力的な店主たちがたくさん集まっている素敵な商店街ですが、やはり他の地方と同じように人口減少が問題になっており、その原因の1つとして「若い人たちが帰ってこない」という課題を抱えています。
でも、お話をお伺いしてみると、それをマイナスに捉えるのではなく、いつだってポジティブに「じゃあどうやっていく?」と前向きに考え、60歳を超えた店主たち、その次の世代の店主たちが一丸となってがんばっているのがわかりました。
未来にむかって、いま、活動的に、創造的に、挑戦しつづけていく気仙沼条南商店街を、プラチナエイジ振興協会はこれからも応援してまいります。

(インタビュー・文/安 憲二郎

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