【内田昌詞さん・良子さん】夢はギネス記録更新よりも、夫婦元気に孫の結婚式に出て曾孫の顔を見ること

スポーツの世界には様々な世界一の記録がありますが、今回お話をお伺いした内田昌詞さん・良子さんご夫婦は「フルマラソンを完走した最高齢夫婦」として、2015年にギネス記録に認定されました。それだけでなく、その後3回も記録を更新し、2018年の神戸マラソンでは86歳と83歳で完走、見事4回目のギネス記録更新を達成されました。
しかし、コロナ禍で大会が開かれなかった4年間を経て出場した2023年の大阪マラソンを機に、内田さん夫妻は「原点回帰」を決断され、いまは新しい夢のために日々を丁寧に暮らしています。
インタビューでは、内田昌詞さんに現在の心境と夢についてお伺いしました。

私たちは2人ともスポーツ大好き人間なんです。もともとスポーツの趣味がたくさんありまして、共通の趣味が、登山、スキー、テニス、卓球、家内はそれ以外に、水泳とかエアロビクスですね、私は野球と筋トレが好きでした。

私が77歳で家内が74歳のときに、近所にあるジムで「みんなで淀川の河川敷を楽しく走りましょう」というイベントがあったんです。それで4kmを走ったのが初めてのマラソンでした。そうしたらこれが非常に気持ちが良くて、病みつきになったんです。

そこから5km、10km、フルマラソンをやり、だいたい27か28大会くらいを2人で走りまして、2015年の大阪マラソンのときに「フルマラソンを完走した最高齢夫婦」として、ギネス世界記録に認定されたんです。夫婦で合計161歳349日という記録で、私が82歳、家内が79歳のときでした。その後も4回ギネス記録を更新して、2019年11月の神戸マラソン完走が現在のギネス記録になっています。私が86歳と家内が83歳、夫婦で合計170歳30日という記録です。

その後はコロナで大会がなくて、昨年2023年の大阪マラソンで私が90歳、家内が87歳でまた挑戦したんですけど、これはずっとレースがなかったことや、走り込みの練習量も不足していたり、年齢も3歳重ねてましたので、結果的に20kmでリタイヤしました。

でもそれをきっかけにして、もういちど走ることの原点に戻ったんです。走ることが楽しいとか、気持ちがいいとか、体のためにいいとかね。そうしたら、走ればよく眠れるし、ご飯も美味しいし、実に楽しいんですよね。

いままではギネスでやってきましたけど、やっぱり大変だったんです。長距離を走り込みする回数も増えるし、しっかりしたスケジュールを立てるのもしんどくなってくるんですよ。皆さんも私たちがギネス記録を持っているって知ってますから、それに対する責任感というか、目標を達成をする義務感というか、そういうふうなプレッシャーもありましたし。

ところが、原点に戻って走ることの楽しみとか、健康のために走るとなると、気持ち的にも余裕があるというか、気分的に本当に楽だし、楽しいですね。

いま私たちがやっているのは、通っているジムのスタジオメニューをやったり、筋トレをしっかりやったあとに1時間から1時間半ほど、10km程度を週に3回走る。日曜日には、2人とも所属している卓球のクラブがありまして、そこで10人くらいの仲間たちと楽しんでいます。

そういうことで改めて夢について考えますと、何よりも大事なことは健康第一です。やはり91歳と87歳ですから、無理して体調を崩したりしたら元も子もありません。特に家族は僕たち夫婦2人で健康であることを一番に喜んでくれているんです。ですから、家族の負担にならないように、自分たちだけでしっかりと健康に生きていくことが大事だなと思います。

それと私もいわゆる戦前戦中、終戦後の人間ですから、物がない、食べるものがない、着るものもない、そういう本当に大変な青春時代を過ごしています。それを思うと、いまこの世の中というか、日常生活は本当に贅沢ですよね。だから、普通の生活がちゃんとできること、ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、自分の趣味ができるという、ごく普通の日常生活がしっかり送れるというのは、本当にありがたいことだと思うんです。

実は私たち、家族が15名いるんですよ。私たち夫婦に娘が3人おりまして、それぞれ結婚しているので婿さんが3人います。そして孫が7人いて、一番上の孫はもう29歳で、下の孫も大学4年生です。その15人の家族全員が私たち夫婦にとって一番の宝物なんです。家族15人が健康で仲良くやってるというのが、私たちにとって唯一の、最大の宝物なんですよ。

そして最終的には、夫婦2人とも元気で孫の結婚式に出て、曾孫の顔を見る。それがいちばんの夢ですね。私たちはお金もありませんし、地位も名誉はありませんけれども、家族全員がみんな仲良く元気にやってくれてる。それが一番ありがたいやっぱり何よりも家族がいちばんの宝物なんです。

ちょうど今年(2024年)の10月で、私たち夫婦は結婚65年で「ブルースターサファイア婚」になります。そのお祝いも家族でしてもらうことになっているので、大切な家族と一緒に、いつまでも健康第一で元気に過ごしていきたいなと思います。

【編集後記】
インタビューで印象的だったのは、ギネス記録を持つということと、その更新を期待される重圧。こればかりは、いかに私たちの想像力が豊かだとしても、本人たち以外には決して知り得ない重みがあったはずです。しかし、やりきったお二人はギネス記録更新を辞めて、原点回帰をされました。それによって、家族との日常がいかに大切で、宝物であるかを、何度も何度もお話ししてくださいました。私たちが当たり前と思ってしまう家族との日常、その大切さを、昌詞さんと良子さんは教えてくださったのです。優しい気持ちで胸がじんわりと温かくなった、とても素敵なお話でした。
プラチナエイジ振興協会は、これからも新しい夢に向かって楽しく走り続ける内田昌詞さん・良子さんご夫婦を応援してまいります。

(インタビュー・文/安 憲二郎

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